- アドラー心理学の技法の大きな目的が分かる!
- アドラー心理学を支える5つの基礎的な理論が何かが分かる!
- アドラー心理学関連(嫌われる勇気など)の書籍で書かれている事の理論的背景が分かる!
この記事では、「アドラー心理学入門講座」の第二弾として、アドラー心理学の理論的な側面に踏み込んだ話をしていきます。
みなさんこんにちは!
このシリーズでは、「嫌われる勇気」でも一躍有名となった「アドラー心理学」について、
その入門的な内容から応用的な内容までを取り扱います。
アドラー心理学についてまだ何も知らないという方から、
嫌われる勇気やアドラー心理学の入門書を読まれた方にとっても、
その内容の復習および、理解を深め、
より実践的に生活の中で活用していけるようになる知識をお届けします。
今日の記事は、
アドラー心理学で展開される話の基礎となる理論についてご紹介をしていきます。
今日の内容を理解する事で、
これまで見聞きしてきたアドラー心理学の話が、
いったいどういった理屈のもとで話されていたのか、ということが分かり、
さらに、自分オリジナルのアドラー流処世術を見つけることができるようになります。
是非最後までお楽しみください♪
アドラー心理学は勇気づけの心理学
アドラー心理学では、人間は誰しもが目的に向かう欲求を持っているとしています。
しかし、
その目的を達成する過程で、人間は様々な課題に直面することになります。
こうした課題を前に、諦めてしまったり囚われてばかりいると、
自分の人生の目的を達成できず、自分本来の生き方を見失うことになってしまいます。
アドラー心理学では、
人生の目的に向かう過程で直面する様々な困難に立ち向かい、乗り越えるための活力を「勇気」と呼び、
そうした困難を、乗り越える活力を与える事を「勇気づけ」と言います。
そして、
この「勇気づけ」をすることこそが、
アドラー心理学の目的といっても過言ではなく、
アドラー心理学が勇気の心理学と言われる由縁もここにあります。
アドラー心理学の5つの基礎理論
すでに述べたように、アドラー心理学では、
人生の様々な課題を克服するための活力を「勇気」と呼び、
その「勇気」を与える事を目的にしています。
そして、
アドラー心理学では人生の課題を乗り越えるための勇気を手に入れる方法として、
5つの基礎となる理論を提示し、
これら5つの理論の組み合わせによって、
人生で直面するあらゆる課題を乗り越える活力を手に入れることができるとします。
その意味で、
アドラー心理学は、人生の課題を乗り越えるための「万能アイテム」と例えることも可能なのです。
その5つの基礎となる理論とは以下の通りです。
- 自己決定性
- 目的論
- 全体論
- 認知論
- 対人関係論
それでは1つずつ簡単に説明をしていきます。
①自己決定性
自己決定性とは、
人間は、環境や過去に一切縛られる事なく、
自ら運命を作り出すことができるとするものです。
アドラーは、人間のことを自分の人生を描く画家であると例えています。
そのため、
もしも「自分自身を変えられない」と悩んでいたり、
環境や過去のせいにして立ち止まっている場合には、
その人は、自分自身を変えないと決定しているのであり、
また環境や過去で自分の人生を決めると決定しているのです。
②目的論
目的論とは、
あらゆる行動はその目的によって説明可能であるとするものです。
これと対になる考え方があらゆる行動には原因があるとする「原因論」です。
原因論と目的論の大きな違いは、
原因論が、行動の理由として、過去にある原因を追求しようとするのに対して、
目的論では、行動の理由として、その行動の目的を追求しようとします。
原因論では、原因を追求するだけで問題は解決しないのに対して、
目的論では、目的に向かって何をすべきかを考えるので問題を解決する方向にすぐ向かいます。
③全体論
全体論とは、人間は体と心が1つのセットとなって個人を形成し、分けて考える事は不可能であるという考え方です。
これと対になる考え方が、意識と無意識、理性と感情、肉体と精神というように、人間を分解して捉えようとする「二元論」です。
全体論と二元論の大きな違いは、
例えば、カッとなって怒ってしまった場合、
二元論では、理性が感情を抑えきれなかったと考えますが、
全体論では、そのようには考えず、カッとなって怒った自分をそのまま自分自身の全体として捉えます。
④認知論
認知論とは、人間は誰もが主観によって世の中を見ているのであって、
客観的に物事を捉えることは不可能であるという考え方です。
つまり、
朝起きて雨が降っていた時、
ある人は、濡れるから嫌だなあと思いますし、
ある人は、今日は部活が休みになるから嬉しいと思いますし、
ある人は、今日は畑の水やりをしないで済むと喜びます。
このように、雨が降ったという事実に対する客観的な捉え方など無いという事です。
そして、アドラー心理学では、この認知論を発展させて、
客観的な捉え方はそもそもないのだから、
物事への捉え方は自分次第で自由に変えることができるとします。
⑤対人関係論
対人関係論とは、
人間の行動全てにはその「相手役」がいるとする考え方です。
相手役とは、その行動によって何らかの影響を受ける人です。
アドラーは、人は、対人的な文脈においてのみ初めて「個人」となると言っています。
そのため、自分の中で起こっている事を理解するためには、
自分の今の行動に対する「相手役」は誰なのか、またその「相手役」からどのような反応を期待しているのかといった事を考えるようにします。
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以上の
- 自己決定性
- 目的論
- 全体論
- 認知論
- 対人関係論
が、アドラー心理学での勇気づけのための基礎となる5つの理論です。
5つの理論を組み合わせる事であらゆる問題を解決可能
そして、
アドラー心理学では、ここまで解説をしてきた5つの理論を組み合わせることで、
人生で直面するあらゆる問題を解決することが可能であるとしています。
そのため、
「嫌われる勇気」やそのほかのアドラー心理学の関連書籍で書かれているような、
個々のノウハウも、その成り立ちを探ってみると、
これら5つの理論の組み合わせによって導かれている事が分かります。
詳しい解説はこの動画では省きますが、
例えば、
「嫌われる勇気」で語られていたような
- 承認欲求や競争意識を捨てるべき理由や捨てる方法
- 他者と自分との課題の分離の必要性
といった話も、
実はこれら5つの理論の組み合わせから導かれる考え方です。
5つの理論の組み合わせのパターンを単純に計算すると、
合計31通りの勇気づけの方法があることがわかります。
そのため、
これらの組み合わせの中から自分オリジナルのアドラー流を作り出すことも可能であると言え、
この5つの理論さえしっかりと抑えておけば、
どのような問題に直面しても柔軟に対処していくことが可能なのです。
アドラー心理学入門講座②まとめ
以上いかがでしたか。
今回の内容は、
アドラー心理学から導き出される技法の根拠となっている、基礎理論について解説をしてきました。
紹介した5つの理論を抑えることで、
アドラー心理学関連の本に書かれていないような事例に対しても、
柔軟に適応していくことが可能になります。
次回の記事では、
これら5つの基礎理論を包括する形で、
アドラー心理学の目指す場所・そこに至る道筋など、さらに大きな全体的な構造の話をしていきます。
今日の内容と次回の内容を抑えることで、
アドラー心理学が「どう生きたらいいのか」という難しい疑問に対して
シンプルな回答をなぜ提供する事が可能であるのかが分かります。
何か一つでもご参考になる点がございましたら幸いです。
また、アドラー心理学について深掘りして学びたいという方にはこちらの書籍が本格的でおすすめす。
この「アドラー心理学入門講座」はYoutube動画でも解説をしておりますので、
是非復習も兼ねてそちらもご覧くださいね♪
最後までご愛読ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう♪
参考文献:
岸見 一郎, 古賀 史健 (2013) 嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え ダイヤモンド社
アルフレッド アドラー(2012)個人心理学講義―生きることの科学 (アドラー・セレクション), 岸見 一郎訳 アルテ
アルフレッド アドラー(2016) 生きるために大切なこと 桜田 直美訳 方丈社
岸見 一郎(1999) アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために ベストセラーズ
八巻秀(2015) アドラー心理学 人生を変える思考スイッチの切り替え方 ナツメ社
岩井 俊憲(2014)人生が大きく変わる アドラー心理学入門 かんき出版