- 心理療法の一つである、ACTの基礎がわかる!
- メンタルの健康にも役立つ、6つの「コア・プロセス」がわかる!
- 痛みをバネに豊かで有意義な生き方を手に入れるためのヒントが見つかる!
アクセプタンス&コミットメント・セラピー、通称ACTについて紹介します。私たちは日々、様々な困難を前に生きていますが、
ACTの6つのコア・プロセスを実践することで、苦しみを軽減するだけでなく、
そこから学習し成長し、痛みをバネに豊かで有意義な生き方を手に入れることができるでしょう。
今あなたが何らかの困難や苦痛を抱えているとしたら、是非参考にしてみてくださいね。
心理療法の一つであるACTの基礎を解説!
みなさんこんにちは!
突然ですが、みなさんは次のような課題を感じてはいないでしょうか?
- 何度もぶりかえす怒りや悲しみとの関わり方を変えたい
- 後戻りしないような継続的な前進が出来る方法を知りたい
- メンタルが改善した後の行動指針が欲しい
今日紹介する、アクセプタンス&コミットメント・セラピー、通称ACTは、
心理療法の一つですが、そういった課題を前に悩んでいるあなたにとって、一つの道標となるはずです。
ACTでは不安や悲しみや怒りといった、解決の困難な気分を無理に取り除こうとしません。
むしろ、排除することが困難なそうした感情や思考に、おさまるべきスペースを与えます。
そして、くよくよ悩む自分の中から飛び出し、
本当に価値あると思える行動へと全力で前向きに進む活力を与えてくれます。
そんなACTについて、これから分かりやすく解説していきます。
是非最後までお楽しみください。
ACTとは
ACTでは、不安や悲しみ、怒りといったネガティブな感情や思考を直接は解決しようとしません。
むしろ、人生には痛みがつきものであることを前提にしています。
そして、痛みを避けられないものとして受け入れながら、有意義で豊かな人生を自ら切り開いていく方法を私たちに教えてくれます。
私たちは、問題に直面した時、それをなんとか解決しようとするものの、なかなか上手くいかない事が多々あります。
そんな時、私たちは「なんて自分はダメなんだ」と、さらには「自分は壊れている」とさえ思ってしまいます。
しかし、ACTに言わせてみれば、私たちは壊れているのではなく、行き詰まっているだけなのです。
その詰まっているものさえ取り除けば、誰であってもスムーズに前に進み始めるはずなのです。
私たち人間には、人間らしさを司る「脳」があります。そんな素晴らしい脳のおかげで、感じ、考え、行動することができます。
しかし、まさにその脳の基本的な心理作用が時に、私たちにとって有害なものとなり、私たちの心を苦しめています。
ACTでは、どうしようもないことを、どうにかしようとはしません。
どうしようもないことは、むしろ「どうしようもないこと」としてそのまま受け入れます。
その考え方と方法を私たちに教えてくれます。
その上で、「自分にとって本当に価値あることは何か」について考える時間をじっくり確保し、その価値あることに向かって行動を起こすことを私たちに求めます。
ACTとは、英語で「行動」を意味しますが、まさにACTを学ぶことによって、
悩みに囚われることを自ら手放し、価値を感じる行動を継続的に起こせるようになるのです。
あらゆる心理的苦痛の背後にある2つの原因
先ほど、脳の基本的な心理作用が時に、私たちの心を苦しめると言いました。
ACTでは、私たちが感じるほとんどの心理的苦痛の原因として、2つの主な心理作用があると考えます。
それは、
- 認知的フュージョン・・・自分の思考に囚われてしまうこと
- 体験の回避・・・嫌な気持ちや思考を取り除こうとすること
の2つです。
これら2つは、脳の基本的な働きですので、私たちは誰であってもこの2つを無意識的に行なってしまいます。
私たちは生まれたばかりの時は、見たり聞いたり触ったりしかできない世界の中で生きていました。
しかし、成長し言葉を学び、考えたり、覚えたりする能力が発達するにつれ、頭の中であれこれと考える世界の中で生きる時間が長くなりました。
認知的フュージョンとは、そんな頭の中だけの世界で生きている状態で、嫌な記憶や、不安を掻き立てる想像の中に入り込んでしまいます。
そんな状態は、誰であっても不快で苦痛を感じる状態です。
そこで、「体験の回避」という心理作用によってそこから抜け出そうとするのですが、
そうした頭の中だけで起きている出来事というのは、取り除こうとすればするほど、どんどん大きく強くなっていき、逆に心理的に苦しめられてしまうのです。
ACTでは、それら2つの心理作用の存在を認め、それに抗うのではなく、うまく迂回して行き詰まりから抜けだします。
そして、これから紹介する6つのコアとなるプロセスによって、本当にしたいと思えるような価値ある行動へと私たちを導いてくれます。
ACTの6つのコア・プロセス
これから、コア・プロセスと呼ばれるACTで使われる6つの方法を紹介しますが、
それらは次の3つの目的に大きくまとめることができます。
それは、
- 目的①思考や感情に抵抗せず受け入れること
- 目的②「今この瞬間」に意識を定めること
- 目的③大切だと思うことができること
つまり、ACTの6つのコア・プロセスを実践することで、
思考や感情に抗うことなく受け入れ、「今この瞬間」に意識を定め、大切だと思うことができるようになります。
結果として、人生で感じる行き詰まりから抜け出し、大切と思える行動に向けて前に進む活力を得ることができるのです。
それではこれから、それら3つの目的に沿う形で6つのコア・プロセスを解説していきます。
①思考や感情に抗わず受け入れるために
思考や感情に抗わず受け入れるとは、頭の中で起こる様々な出来事に囚われることなく、中立的な立場を維持するということ。
そのために、ACTでは、
- 脱フュージョン
- アクセプタンス
という2つのコア・プロセスを発動させます。
「脱フュージョン」とは、自分の思考、想像、記憶から一歩下がり、距離をとった位置から、評価を下すことなく観察することを言います。
そのためにACTではよく、そうした頭の中の出来事を家の外を走る車に見立て、家の中からただ眺め、関わったり巻き込まれたりすることなく、ただ過ぎ去っていくのを眺めるイメージを持つようにします。
「アクセプタンス」とは、痛みを伴う感情や思考に対して、それに抵抗したり追い払ったりしようとせず、自分の心の中のスペースを広げ、それらを受け入れる場所を作ることを言います。
それらの感情や思考を正当化したり感謝したりするのではなく、ただその場にいることを許容するということ。
そのためにACTではよく、嫌な気持ちや思考がそこにいても気にならないくらいに心の中の空間を広げるイメージで、自分の中に息を吹き込むイメージを持つようにします。
以上の2つのプロセスによって、思考や感情に対してオープンになっていき、頭の中で起こる様々な出来事に囚われることなく中立的な立場を維持できるようにするのです。
②「今この瞬間」に意識を定めるために
「今この瞬間」に意識を定めるとは、意識を過去や未来に彷徨わせず、「今」というこの瞬間に定め、それでいて身の回りで起きている出来事にはっきりと気付いている状態を言います。
そのためにACTでは、
- 今、この瞬間との接触
- 文脈としての自己
という2つのコア・プロセスを発動させます。
「今、この瞬間との接触」とは、自分の頭の中の世界に入り込むのではなく、今この瞬間、目の前で体験している内容に意識を向け味わうことをいいます。その内容というのは、実際に五感で感じることだけでなく、今この瞬間に頭の中で起きていることにも範囲は及びます。
そのためにACTでは、マインドフルネスの手法を用います。心を過去や未来に彷徨わすことなく、目で見て、耳で聞いて、鼻で匂い、手や足で触れていること1つ1つに丁寧に意識を向け、それと同時に内面でわき起こることに対しても、それに判断を下すことなく、ただ気づき観察します。
「文脈としての自己」とは、そうした「今、この瞬間の自己」よりさらにもう一段階高いところから、自分自身を観察する視点のことをいいます。言うなれば、考えている自分を観察する自分。感じている自分を観察する自分です。
例えば、子供時代の自分と、今の自分とは、場所も見た目も考え方も異なることでしょう。
しかし、自分であることには変わりがありません。子供時代の自分も、大人になった今の自分も、自分であることには変わりありません。その変わらない自分というのが、ACTでいう文脈としての自己です。
以上の2つのプロセスによって、過去のことや、将来のことで頭をいっぱいにするのではなく、目の前でまさに今直面していることにしっかりと向き合い、落ち着いた心で現実を見ることができるようになるのです。
③大切だと思うことをできるために
大切だと思うことをするとは、自分がそれをすることに意味を見出し、そして意味を見出したことを実際に行動に移すことを言います。
そのためにACTでは、
- 価値
- コミットされた行為
という2つのコア・プロセスを発動させます。
「価値」とは、自分にとって何が大切かを知るということです。自分は人生でこれをやりたい、大切にしたい、こんなふうに行動したい、ということを言葉にしていいあらわしたもののことです。
ACTでは、価値とゴールとは異なるものとして区別します。ゴールは未来にありますが、価値は今ここにあります。価値とは、人生に意味や目的を与えてくれるものであり、ゴールを設定するように自分を動機付け、刺激し、行動に駆り立てるものです。
自分にとっての「価値」とは何かを知るためにACTでは、心の一番奥にある「願い」は何かと質問します。それは、世界や周りの人、そして自分自身とどのように関わりたいかという希望です。そして、自分は人生でなにをしたくで、どう行動したくで、どんな人になりたいかという希望です。
「コミットされた行為」とは、自分にとっての価値に導かれ行う行動のことです。つまり、自分が大切だと思ったことを、実際に行うということです。
そんなことを言うと、大切だと思ったことを文字通り行動に移せたらいいに決まっているけど、それが出来ないから困っている、という声が聞こえてきそうです。
そこで活躍してくれるのが、ここまでに紹介しているコア・プロセスの全てです。
大切だと思ったことをしようとすると、「自分にはそんなことできないよ」「失敗するに決まっている」「また傷つくことになるよ」といった声が頭の中で聞こえてくるかもしれません。そしたら、脱フュージョンとアクセプタンスによって、その声からネガティブな影響を受けないようにします。
そして、「今この瞬間との接触」と「文脈としての自己」によって、焦ることなく、冷静に、今この瞬間にしたらよいことを落ち着いて実行に移すことができます。
ACTという言葉は、それ自体が「行動」を意味する英単語であるように、最終的には行動を起こせるようになることにその焦点があります。そのために、以上紹介してきた6つのコア・プロセスがあるのです。
まとめ
以上いかがでしたか?
今日の記事では、アクセプタンス&コミットメント・セラピー、ACTについて紹介しました。
ACTの実践における望ましい結果とは、価値に導かれたマインドフルな生き方です。
メンタルの不調の緩和は、ACTにとってはゴールではなく、副産物としてもたらされます。
私たちは日々、様々な困難を前に生きていますが、
ACTの6つのコア・プロセスを実践することで、苦しみを軽減するだけでなく、そこから学習し成長し、痛みをバネに豊かで有意義な生き方を手に入れることができるのです。
ちなみに、今日の記事と関連して、メンタル的な悩みに対処する心理的手法として、認知行動療法やスキーマ療法、また認知の歪みについてこちらの記事で詳しく解説しておりますので、是非合わせてご覧ください。
https://youtu.be/4WmWAj070NI スキーマ療法の基本を分かりやすく解説! 幼少期の感情欲求に起因する「不適応的スキーマの18パターン」がわかる! 「生きづらさ」を根本から変えるヒントが見つか[…]
https://www.youtube.com/embed/Ec84wetocIs↑この記事の認知行動療法に関する内容はアニメーション動画でも解説しています!↑ 認知行動療法とは何かが分かる! 認知行動療法の大ま[…]
https://www.youtube.com/embed/4rhqATNDA0c↑「認知の歪み」については動画でも解説しています!↑ 認知の歪みとは何か、またその代表例を知れる! 認知の歪みの原因と改善策につい[…]
この記事の内容が何か一つでもあなたのお役にたてておりましたら幸いです。
最後までご愛読ありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
この記事の内容はアニメーション動画でも解説がされていますので是非合わせて御視聴ください。
・痛みを避けられないものとして受け入れながら、
有意義で豊かな人生を自ら切り開いていく方法・あらゆる心理的苦痛の背後にある2つの心理作用(原因)
①認知的フュージョン・・・自分の思考に囚われてしまうこと
②体験の回避・・・嫌な気持ちや思考を取り除こうとすること
・ACTのコア・プロセス(解決方法)
・思考や感情に抵抗せず受け入れるための方法
・コア・プロセス①脱フュージョン
・自分の思考、想像、記憶から一歩下がり、距離をとった位置から、
評価を下すことなく観察する
・コア・プロセス②アクセプタンス
・痛みを伴う感情や思考を正当化したり感謝したりするのではなく、
ただその場にいることを許容する
・「今この瞬間」に意識を定めるための方法
・コア・プロセス③今、この瞬間との接触
・今この瞬間、目の前で体験している内容に意識を向け味わう(マインドフルネス)
・コア・プロセス④文脈としての自己
・「今、この瞬間の自己」よりさらにもう一段階高いところから、
自分自身を観察する視点を持つ
・大切だと思うことができるようになるための方法
・コア・プロセス⑤価値
・価値とは、人生に意味や目的を与えてくれるもの
・世界や周りの人、そして自分自身とどのように関わりたいかを自問自答
・人生でなにをしたくて、どう行動したくて、どんな人になりたいのかを自問自答
・コア・プロセス⑥コミットされた行為
・自分が大切だと思ったことを、実際に行う
・ACTという言葉は、それ自体が「行動」を意味する英単語でもあるように、
最終的には「行動」を起こせるようになることに焦点が置かれている
参考書籍:
ラス・ハリス (著), 武藤 崇 (監修, 翻訳), 岩淵 デボラ (翻訳), 本多 篤 (翻訳), 寺田 久美子 (翻訳), 川島 寛子 (翻訳)(2012)よくわかるACT (アクセプタンス&コミットメント・セラピー) 明日からつかえるACT入門 星和書店
小原 圭司 (監修, 翻訳), トッド・B・カシュダン (編集), ジョセフ・チャロッキ (編集), 川口 彰子 (翻訳), 伊井 俊貴 (翻訳), 中神 由香子 (翻訳), 岩谷 潤 (翻訳), 木山 信明 (翻訳), 須賀 楓介 (翻訳)(2019)ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス -しあわせな人生のための7つの基本- 星和書店