どうすれば「なんとなくやる気が出ない」といった無気力な状態を避け、そして予防できるのか、その方法を解説していきます。
無気力という状態は、単なる気分の問題ではなく、
そこに至る心理的なプロセスのあるものです。
人が無気力に陥ってしまう流れについて知ることは、実際に自分がそうなってしまう事を避け、毎日にやりがいと楽しさを見出すことにつながります。
学習性無力感とうつ病の関係について
さて、以前こちらの記事では、学習性無力感とうつ病の関係性について紹介しました。
https://www.youtube.com/embed/Z3z1sWr4aqw「学習性無力感」については↑の動画でも詳しく解説をしております! どうして無気力が形成されるのかが分かる! 無気力がどのような影響[…]
学習性無力感とは、努力したところで期待する成果を出せないということを何度も経験した結果、脳が無力感を学習し、結果として頑張る気力が失せてしまった状態のことです。
そして、この学習性無力感はある一つのことに対してのみではなく、
人生全般にまで広がることがあり、そうなると「とにかく全てにおいてやる気が出ない」といった鬱症状に似た状態になってしまいます。
みなさんも似たような事を経験したことがあるのではないでしょうか?
例えば、学生時代。
ある科目がどうしても苦手で、どんなに頑張っても成績が伸びないからすっかりやる気を失ってしまった。
他にも、会社員として。
自分の企画は何度も却下。営業も断り続けられ成果出ず。頑張っても昇進などの変化はなく毎日同じことの繰り返し。
そうした、「頑張ったところで結果が変わらない」と感じてしまう経験を繰り返していると、
人はその事についてのことだけでなく人生全般についても同じように捉えるようになってしまいます。そして、しまいには全てのことにやる気を感じられない無気力な状態になってしまうのです。
まさに、無力感を学習してしまうわけです。
ただ先程の、努力が成果に結びつかないといった類の経験をしたとしても、
結果として日常生活に支障がでるほど無気力になるかどうかは、
失敗の原因を何に結びつけるかで決まってきます。
原因帰属理論とは
学習性無力感に関する研究でそのことは「原因帰属理論」として知られます。
物事が自分の期待通りに行かない時、その原因を何に求めるかというのを「原因帰属」と言いますが、原因帰属の方法は大きく分けて4つあります。
それは自分の問題か、それとも自分以外の問題か。
それは今回限りのことか、それとも今後も変わらない必然のことか。
それらの問いの組み合わせで、合計4パターンの方法があります。
- 自分の問題でかつ今回限りのものなら、努力や経験の問題。
- 自分の問題でかつ今後も変わらないものなら、才能や能力の問題。
- 自分以外の問題でかつ今回限りのものなら、運や偶然の問題。
- 自分以外の問題でかつ今後も変わらないものなら、環境や課題の困難度の問題。
大きく分けてこれら4つの方法で、私たちは物事の原因が何かについて考えています。
そして、無気力に陥る時というのは、望まない出来事の原因を「自分の問題でかつ今後も変わらない」もの、すなわち今後も変わることのない才能や能力といった自分の性質の問題にしてしまう場合です。
つまり、人が無気力に陥る時の心理的なプロセスを順序立てて説明すると次のようになります。
- 望み通りに行かない事態の経験
- 自分にはその状況をコントロールできないと思う
- その原因を才能や性格など、今後も変わることがないような自分に関することに見出す
- 今後もその状況を変えることは自分には出来ないだろうと思い、やる気を失う
- 「自分にはどうせ出来ない」という思考が人生全般におよび無気力な状態に陥る。
もしあなたが今、無気力な状態にあるのなら、
それは決して自分がダメだからといった理由ではありません。
そうした一連の心理的プロセスの結果として無気力に陥ってしまっているのです。
無気力になってしまっても仕方のない状況にいたのだということ、
そして無気力へと向かう心理的な段階を経てしまったというわけなのです。
少なくとも、そのように自分の無気力について分析できると、
何事にもやる気を感じられなくなってしまった自分を責めてしまう気持ちを、まずは和らげることができるはずです。
学習性無力感を予防し克服する方法
さて、それでは一体どうすれば無気力に陥った状態から回復し、また無気力になってしまうのを予防することができるのでしょうか。
その方法について以前こちらの動画では三つの方法を紹介しました。
その方法というのは、
- 失敗やストレスに対する免疫をつける
- 原因について楽観的になる
- 認知療法的アプローチを試みる
の3つです。
簡単におさらいして紹介します。
①失敗やストレスに対する免疫をつける
学習性無力感に陥ってしまう根本には、状況を自分の力ではコントロールできないという自信のなさがあります。
そのため、出来事は自分の力でコントロールできるという経験を一つでも多く持ち、日頃から自信を培っていくことが大切になってきます。
無気力に関する心理実験の結果からも、普段からちょっとした問題を乗り越える経験を多くしていると、いざコントロールが難しい問題を前にしたときにも無力感に陥る可能性が低いことが知られています。
もちろんこれは予防策としての方法ですが、
日頃から自分を強くするために、あえて困難な状況に挑戦してみるといった心持ちでいることが、無気力に対する免疫を高めることにつながります。
②原因について楽観的になる
先程紹介した、無気力状態に陥る心理プロセスからも分かるように、
自分の力ではコントロールできない状況を前にした時、その原因を能力や性格など、自分自身の個人的な問題に見出してしまうことが、無気力状態に陥ってしまう引き金となります。
そのため、シンプルに、原因を自分以外のこと、すなわち環境のせいや運のせいにしてしまえば良いのです。
えーそんなことでいいの!?と思われてしまうかもしれませんが、なにかもかもやる気を失ってしまって鬱状態になってしまうよりは、
そのように自分のせいにしない方向に思考をもっていくことは、自分を守ることに繋がるはずです。
それに、無気力に陥りやすい人というのは、人一倍自分のせいにしてしまいがちの傾向にありますので、それくらい楽観的に物事の原因を捉えるくらいがちょうどよいともいえるのです。
③認知療法的アプローチを試みる
認知療法で活用されるABC理論は、自分の思考パターンを修正することに役立ちます。
これはA(事実)にB(認知)が入ることでC(感情、行動)が生まれるというもの。
同じ事実Aを前にしても、人によって感じることや行動内容のCが異なるのは、事実Aに対する認知B、すなわち物事の捉え方が違うからです。
事実Aは文字通り事実ですので変えることが出来ないものです。
しかし、認知Bは捉え方の問題ですので意識的に変化を加えることが可能です。
そして認知Bが変われば、そこから生まれる感情や行動のCも連動して変わります。すなわち、捉え方次第で自分のことは変えることが出来るというわけです。
ただ、無気力に陥りやすい人というのは、この認知Bの部分が、固定的・断定的な傾向にあります。
「自分の能力が低いからに違いない」
「絶対に良い成果を出さなければならない」
「自分にはどうせ無理に決まっている」
といったようにです。
繰り返し触れるように、無気力に陥る際の引き金となるのは、コントロール出来ない状況の原因を、変えることのできない自分の問題に見出してしまうことです。
つまり、
・問題の原因が自分にあるに違いない
・その自分の問題は変えることができないに決まっている
というように、固定的・断定的な捉え方を無意識的に行ってしまっているわけです。
そうした捉え方を変えるためには、まず無意識的に行ってしまっている自分のせいにしがちな捉え方のクセについて自覚すること。
その上で、「必ずしもそうではないのでは?」と自問して、そうではない別の捉え方を採用するようにします。
これはまさに、原因帰属の方法を認知のあり方から変えるアプローチです。
その意味でこの認知療法的アプローチは、学習性無力感を克服していく際においても非常に有効になるのです。
無力感に陥りにくい目標の立て方
無気力に陥る心理的プロセスの存在を知り、ここまで紹介した方法を試すだけでもかなりの改善が期待できると思いますが、
ここではさらにもう一つ、効果的な方法を紹介します。
学習性無力感に関する研究から、実は、目標の持ち方それ自体が無力感への陥りやすさと関係していることが分かっています。
目標というのは大きく2つに分類することができます。
それは、ラーニング・ゴール(学習目標)と、パフォーマンス・ゴール(遂行目標)の二つです。
ラーニング・ゴールとは学習することそれ自体を目標にすること。
パフォーマンス・ゴールとは目に見える成果や社会的な評価を目標にすること。
そして、無気力になることを予防し克服するにあたって効果があるのは、ラーニング・ゴールの方を目標にするということです。
一方で、無気力になりやすい人というのはパフォーマンス・ゴールの方を目標にする傾向にあります。
パフォーマンス・ゴールを持っていると、自分が他人より優れていると実感できている間は高いモチベーションを維持しますが、
ちょっとした失敗などですら自分の能力の低さを感じてしまうと途端にやる気が削がれてしまいます。
一方で、ラーニング・ゴールを持っていると、大前提として自分の能力は固定されたものではなく学習によって高められるものであると認識できます。
また、たとえ困難を前にしたり結果が失敗であったとしても、その原因を自分の学習がまだ足りなかっただけだと前向きに捉えることが自然とできるのです。
無気力状態に陥ってしまうというのは、自分の思い描く理想の姿と現実の自分との間のギャップに苦しみ、そ してそのギャップを埋めていくことが絶対に不可能であると認識した結果、頑張る意味を見失った状態とも言えます。
その意味で、ラーニング・ゴールは学習の最中も常に目標が達成されている状態が維持されるため、
理想と現実のギャップを意識するかもしれませんが、そのことについて苦しむまではいかないのです。
そのため是非、今の自分の生活に何かラーニング・ゴールとなりうるような目標を設定できないか考えてみてください。
まとめ
以上いかがでしたか?
この記事では、人が無気力に陥ってしまう時の心理的なプロセスについて学び、
どうすれば無気力になってしまうことを予防し、また克服できるのかその方法を紹介してきました。
もしあなたが今、あらゆることにやる気を感じられなくなり思い悩んでいるのなら、
そうした無気力状態になってしまったのには心理的な理由があったと知ることは、それだけで少なからず気持ちの面で救いになるはずです。
無気力に陥ってしまう人ほど実は人一倍責任感が強く、真面目な性格の傾向にあります。
一方で自分自身に厳しくもあるため、無気力になって動けなくなった自分を責めてしまうことも多いでしょう。
しかし、それは決して自分がダメ人間だからといった理由ではなく、
無気力になってしまうだけの十分な理由があって、またそうなる必然的なプロセスを歩んでしまっただけなのです。
今日紹介した4つの方法はどれも無気力の研究の中で効果があると認められた方法です。
まずはすぐできる方法として、原因について楽観的になり自分の個人的な問題のせいにしてしまうことから抜け出してみましょう。
この記事の内容が何か一つでもあなたのお役にたてておりましたら幸いです。
- 学習性無力感とは
- 努力したところで期待する成果を出せないということを何度も経験した結果、脳が無力感を学習し、結果として頑張る気力が失せてしまった状態のこと
- 学習性無力感はある一つのことに対してのみではなく人生全般にまで広がることがあり、そうなると「とにかく全てにおいてやる気が出ない」といった鬱症状に似た状態になる
- 原因帰属理論とは
- 物事が自分の期待通りに行かない時、その原因を何に求めるか
- 4つのパターン
- 自分の問題でかつ今回限りのものなら、努力や経験の問題
- 自分の問題でかつ今後も変わらないものなら、才能や能力の問題
- 自分以外の問題でかつ今回限りのものなら、運や偶然の問題
- 自分以外の問題でかつ今後も変わらないものなら、環境や課題の困難度の問題
- 学習性無力感に陥りやすいのは才能や能力の問題にする時
- 人が無気力に陥る際の心理的プロセス
- ①望み通りに行かない事態の経験
- ②自分にはその状況をコントロールできないと思う
- ③その原因を才能や性格など、今後も変わることがないような自分に関することに見出す
- ④今後もその状況を変えることは自分には出来ないだろうと思い、やる気を失う
- ⑤「自分にはどうせ出来ない」という思考が人生全般におよび無気力な状態に陥る。
- 無気力を予防し克服する方法
- ①失敗やストレスに対する免疫をつける
- 日頃から小さな困難を克服していると無力感に陥りにくい
- ②原因について楽観的になる
- 自分以外のことに原因を見出すと無力感に陥りにくい
- ③認知療法的アプローチを試みる
- 自分のせいにしてしまいがちな思考の癖を修正する
- ④ラーニングゴールを設定する
- 学習することを目標にすることでモチベーションを維持できる
- ①失敗やストレスに対する免疫をつける
この記事の内容は動画でも解説しておりますので合わせてご視聴くださいますとより理解が深まります。
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