NLP講座第10回
NLPの連載講座の最後の投稿です。
これまで、NLPの知識を紹介しながら、
前半を自己改善パート、後半を対人関係の改善パートに分けて解説してきました。
その中で様々な知識を紹介しながら進めてまいりましたが、かなり多くの知識を紹介しており最初の方の知識があやふやになっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回最後ということで、第1回から第9回までの内容を振り返りながら知識の総復習を進めていこうと思います😁
NLPが目指す先とは?
NLPではいわば「知識の道具箱」
NLPが紹介しているのは、様々な心理的知識とその使い方のマニュアルです。
それをどう使い、何に活かすかは極論人次第ですが、NLPとしてはその目的を、
「自分(他人)を良い状態に導くため」であるとしています。
NLPでは、高い能力が良い状態をもたらすのではなく、良い状態が高い能力をもたらすと考えます。
何をするにしても、望ましい結果を得たいのなら、何よりも優先して取り組むべきことは自分自身、もしくは相手を良い状態へと導くように取り組むことであるということです。
そこで、第一回目に次のシートを使って自分にとっての良い状態とは何かについて思考の整理をしていただきました。
脳の基礎プログラムとは?
NLPは、
・N(Neuron)・・・五感
・L(Linguistic)・・・言語・ジェスチャー
・P(Programming)・・・プログラミング
をくっつけた言葉です。
その言葉からも分かるように、NLPでは、
五感(N)と言葉(L)が脳のプログラム(P)を作ったり起動させたりする
と考えます。
そして、NLPではそんな脳のプログラムに対して次のような洞察をしています。それは、脳は3つの基本的なシステムと1つの根本欲求によって動作しているという考え方です。
3つの基本的なシステムというのは、
①空白埋めシステム・・・脳は疑問を嫌い自動的にその疑問(空白)を埋めようと動き出す
②焦点化システム・・・脳は複雑を嫌い自動的に物事をシンプルに捉えるために焦点を作り出す(物事を単純に見ようとする)
③快追求・痛拒絶システム・・・脳は快楽を求め、痛みを避けるように自動的に動く
1つの根本欲求というのは、
脳は、安心と安全を求める「安心・安全欲求」のことです。
そして、この1つの根本欲求から派生する形で、先ほどの3つの基本的なシステムが構築されています。
以上の知識が、人間の脳について理解する上でとても重要で、その知識を巧みに応用しながら、自分や他者を「良い状態」へと導いていくようにするのです。
新しいプログラムを作り出すためには
状態が悪いというのは、外からの刺激に対してあるプログラムが反応して、結果として悪い状態になっています。
そのため、問題は脳内プログラムにあるというわけです。
NLPでは物事への反応の仕方をシンプルに、
N x P = L
と示します。この中でNとは、五感を意味し、それは体験そのものを意味しています。
つまり、同じ体験に対しても、Pが変わりさえすればそこから出てくるLが変わるということです。
そして、NLPでは体験がPを作り出すと考えます。ここでポイントとなる観点は、その体験というのは「擬似体験」でもよく、擬似体験というのは言葉によって再現可能ということです。
人間は、言葉を使う(見る、聞く、話す、書くなど)だけで、無意識的にその言葉に付随する擬似体験を起こします。
それを利用して、新しいプログラムを作っていきます。
脳内プログラム再構築を促すリフレームとは
それでは次に、具体的にどのように言葉をつかって新しいプログラムを作っていくのかを見ていきます。
その方法の1つが、「リフレーム」と呼ばれるものです。
リフレームというのは、物事の見方を変える手法のことです。
例えば、顧客からのクレーム対応の話について。
・Aさんにとっては、クレームは気分を害するもの
・Bさんにとっては、クレームは改善をもたらすもの
この場合、Aさんはクレームの悪い面をみており、Bさんはクレームの良い面を見ているわけです。では、どうしてAさんとBさんとで物の見方が異なるのかと言うと、それはAさんとBさんとでは持っている「フレーム」が異なるからです。
ここで、Aさんを導いてBさんのようにクレームを捉えられるようにするのがリフレームという手法です。
では、どうやってリフレームを促すのかというと、それは質問によってです。(自己改善の場合は自問自答)
先ほど述べたように、人間にはその基礎的なシステムとして「空白埋めシステム」が備わっているので、意図的に疑問を投げかけて空白を作ることでその空白を埋めるように動き出します。
具体的な質問例などは過去の投稿を振り返って頂きたいのですが、
そのように意図的に質問を投げかけていくことで、今までとは違った角度で物事を見られるように誘導していき、新しい体験を起こさせます。
そしてその新しい体験の蓄積を通じて新しいプログラムを構築していく。というのが、リフレームです。
言葉を使った身体感覚へのアクセス
もう一つ、新しくプログラムを構築する方法が言葉を使った身体感覚へのアクセスという方法です。
先ほど述べたように、言葉にはそれを使う(読む、話す、聞く、書くなど)だけで擬似的な体験が巻き起こります。
脳は実際に体験することと、脳内だけで体験することとを明確には区別できていないので、擬似的な体験を繰り返すだけでも新しいプログラムを作れるというわけです。
例えば、やる気を取り戻す時。やる気というのはNLPでは身体感覚であると捉えます。やる気というのは、映像としてイメージするものでも、耳で聞いたりするものではなく、胸やお腹で感じるものだからです。
そして例えば次のように質問をします。
・かつてやる気に満ちていた時の自分の様子を頭の中で想像してください
・かつてやる気に満ちていた時を思い出させる音楽を聞くか、想像してみてください
おそらく、それだけで、気持ちの変化を感じるはずです。
このプロセスを、目の前にあるやる気を感じられないことに対して繰り返し適用することで、やる気を感じ出すような新しいプログラムを構築していくことができるようになるのです。
ニューロロジカルレベル
サロンでは、この第6回目から対人関係の改善パートへと移行しましたが、使い方次第ではこの第6回目以降の内容も自己改善へと役立てることができます。
(それと同様に、ここまでの内容も対人関係の改善に役立てることができるということです)
さて、ニューロロジカルレベルとは、人間の意識レベルに関する研究から作られた理論で、他者の意識レベルに合わせた言葉選びをすることで意図した影響を与えることが出来るとしてNLPでは活用されています。
ニューロロジカルレベルでは、人間の意識のレベルを次の5つのレベルに分ます。そして、それは下位レベルから上位レベルとなっています。
- 環境レベル(あなたの環境はすばらしい)→機会・制約に影響
- 行動レベル(あなたの振舞いはすばらしい)→行動・反応に影響
- 能力レベル(あなたは〜の分野で素晴らしい素質がある)→戦略・計画に影響
- 信念・価値観レベル(あなたが信じて価値をおいていることはすばらしい)→動機に影響
- アイデンティティレベル(あなたは素晴らしい)→使命・役割に影響
これらは、①の環境レベルが一番低いレベルで、⑤のアイデンティティレベルが一番高いレベルです。
そして、この知識で重要なポイントは、
どの意識レベルを刺激する言葉を使うかで相手に与える影響が大きく異なってくるということです。
このニューロロジカルレベルの知識を活用しやすいのは、相手を褒めたり、叱ったりするとき。
悪い例として、叱るときに、行動レベルのミスに対して、
アイデンティティレベルや価値観レベルで指摘してしまうと必要以上に傷つけるというケースがあります。
一方で、褒める時は逆に行動レベルの事であっても、
行動レベルの意識だけを刺激する言葉使いだけでは相手はあくまでも行動を褒められただけで自分自信を褒められたとは感じません。
そこで、あえて価値観レベルやアイデンティティレベルを刺激して褒めてあげることで、自信を持てるようになりやる気も高まるという効果が期待できます。
ポイントは、
相手の上位の意識レベルにポジティブな影響を与えれば、
相手の行動がポジティブに変わり、体験もポジティブに変わりポジティブな脳内プログラムが徐々に構築されていく。
ちなみに、上記の「相手」の部分を「自分」に変えても同じで、
自分の上位の意識レベルにポジティブな影響を与えれば、自分の行動がポジティブに変わり、体験もポジティブに変わりポジティブな脳内プログラムが徐々に構築されていく。
ということです。
対人関係では特に「ペーシング→ラポール」が重要
ラポールとは何かというと、それは「信頼関係」のことです。
このラポールが築けていないと相手は心を開いていないようなもので、いくら巧みに言葉を使ったとしても相手には届きません。
では一体どうすればラポールを築けるのかというと、それは「ペーシング」によってです。
ペーシングとは「相手に合わせる」という意味です。
NLPでは、その実践手段の理論として、
ペーシング(相手に合わせる)→ラポール(信頼関係を築く)→言葉を使って相手を導く→相手を良い状態にする
そして、そのペーシングのコツとしてNLPでは相手の無意識レベルの反応に合わせるという方法を紹介しています。
呼吸や姿勢、話すスピードなど、相手が意図せず表面化させているジェスチャーにこちらもタイミングを合わせるということを意識してみましょう。
優位感覚とは?
ペーシングを行っていく際の一つのキーワードとして「優位感覚」というものがあります。
優位感覚とは、人間を感覚別に3つのタイプに分けてその特徴を説明するものです。
それは、
・視覚優位型
・聴覚優位型
・身体感覚優位型
の3つです。
右利きや左利きというのがあるのと同じように、私たちも物事を捉える際には癖があるということです。
そしてペーシングの際には、相手の優位型がどれかを見極め、それに合わせるようにすることでより効果的にペーシングを行うことができます。
例えば、
①視覚優位型の人には
・イメージを使って説明するようにする
・視覚に訴えかける言葉使いを多用する
・こちらも身振り手振りを加えながら説明する
②聴覚優位型の人には
・論理的に説明するようにする
・数字で説明するようにする
・擬音語などを使うようにする
③身体感覚優位型の人には
・感覚的な表現を使うようにする
・気持ちや直感などを話に盛り込みながら話す
・相手の感じ方を大切にする
という方法をご紹介しました。
相手がどの優位型なのかを調べる方法も投稿では紹介しているので是非読み返してみてくださいね。
リーディングの3つのポイント
リーディングとは日本語にすると「誘導」という意味です。
他者に影響を与え誘導していく行為をNLPでは「リーディング」と言います。
流れとしては、ペーシングをして、ラポールを築いていき、そしてリーディングを通じて相手に良い影響を与えていく、これがNLPの対人実践の流れです。
リーディングを行う際のポイントの1つはその「ペーシング→ラポール→リーディング」という順番を間違えないということ。
NLPでは言葉を巧みに使い分けて相手を誘導していくわけですが、
その肝心の相手が心を閉ざしこちらの言葉に聞く耳を持っていないのなら、当然NLPの効果を発揮することはできないのです。
リーディングの2つ目のポイントは質問上手になることです。
すでにお伝えした通り、質問を通して相手にリフレームを促し、新しいプログラムを構築していくというのがNLPではよく使われる手法です。
リーディングを行っていく時には、
「どんな質問を投げかければ良い影響を与えられるだろうか?」
と自問するところから初めてみましょう。
そして3つ目は言葉の影響力を知るということです。
まず、言葉というのは、全く同じ言葉でも使う人によってその言葉の意味する内容や範囲にズレがあるということも常に念頭においておきましょう。
そのズレについて、NLPでは言葉による「省略」「歪曲」「一般化」という特徴を解説しています。
自分が使う言葉、はたまた相手が使う言葉に対しては、
・一体何がその言葉には省略されているのか?
・一体その言葉によって何が歪曲されているのか?
・一体その言葉によって何が一般化されているのか?
ということに注意を向けるようにしましょう。
まとめ
以上がNLPの知識的なまとめとなります。
NLPは知識の道具箱。それをどう使うかは人次第です。
今月の内容について、もっと深く学んでいきたいという方は是非書店などでNLP関連の書籍を読んでみて知識を深めてみてください。
今月解説した内容が頭の片隅にはいっているだけでも、スムーズに学習を進めていくことができると思います。
おすすめの本はこちら
NLP全10講座一覧
【NLP講座①】神経言語プログラミングを学んでメンタリストになろう!
【NLP講座④】脳内プログラム再構築を促す「リフレーム」とは?
【NLP講座⑥】ニューロロジカルレベルを活かしたコーチング方法
【NLP講座⑦】ラポールとペーシングで相手への影響力を高める
【NLP講座⑧】相手の「優位感覚」に合わせたコミュニケーションをしょう!
現在の記事はこちら→【NLP講座⑩】NLPの知識まとめ