他者との距離感の取り方

【人間関係の心理学#4】他者との適切な距離感の測り方について(課題の分離)

人間関係の悩みの背後にある「距離感の問題」

連載企画「人間関係の心理学」第4回目の投稿です。

これまで、

・人間関係の問題は距離感の問題(他者理解を深め、自己理解を深める)

・他者理解の観察眼を持つ(3つの他者分析の心理的手法を紹介)

・他者と自分との溝になりうる「認知の歪み」を知る(10パターンを紹介)

という流れで進めてきています。

今連載の目的は、他者理解を深めることを通じて、自己理解を深めること。

そして、月のはじめに「人間関係の問題は『距離感の問題』とも言える」とも書きました。

一方的にこちらが仲良くなりたくて、距離感を近づけようとしても、相手がその気でないならうっとうしがられるだけです。

また、相手に対してあれこれ指摘して改善させたいとしても、そんな距離感の間柄でまだないのなら、やはり相手は嫌がります。

はたまた相手による裏切り行為や失礼な態度によって怒ってしまうことも、捉えようによっては距離感の問題であると言えます。

つまり、自分としては近い距離間の間柄だと思っていたのに、相手が勝手にそこから離れるようなことをするから怒る。といったように。

人間関係でうまくいかない、いじわるされる、言うことを聞いてくれない、

そういった問題にはもちろん表面的な要素は多くありますが、見方を変えると「互いの距離感」に対する認識のズレがその背景にあると言えます。

あらゆる人間関係を、自分との距離感で捉えるというのは、すこし無機質でドライな印象を受けますが、そのような捉え方を1つの視点として持つことで、

柔軟な人間関係を築いていくために役立つはずです。

前置きはさておき、今日は「他者との距離感」の問題について、とても役に立つベースとなる考え方を紹介します。

他者との距離感の取り方の基本的な考え方

「距離感」という単語を頻用しますが、広い意味で「距離感」という言葉を捉えて頂けると、理解がスムーズにいくと思います。

狭い意味で「距離感」を捉えてしまうと、先ほど述べたように無機質な理論に聞こえてしまうかと思いますが、気持ちの問題や、態度の問題なども、広い意味で「距離感」の問題と捉えられると客観的な分析が可能になります。

さて、その上で他者との距離感の取り方についてですが、

私が良いと思っている方法は、

徐々に距離を近づけていく

という基本スタンスです。

それを可能にする根本的な考え方として、アドラー心理学の課題の分離という概念がとてもおすすめなので紹介します。

「課題の分離」の考え方とは

課題の分離というのは、自分の課題は何か、そして相手の課題は何か、について見極める目を持つことです。

そして、相手の課題には踏み込まない、逆に相手にも自分の課題に踏み込ませない、というのが、相手と自分の課題を分離するということ。

じゃあ、自分と相手の課題について見分けるにはどうすれば良いのかと言うと、

「最終的な結論を出すのはどちらか?」

というシンプルな問いについて考えるだけです。

例えば、

  • 誘われたイベントにいくかどうかを決めるのは、誘われた方です。
  • プレゼント渡して喜ぶかどうかを決めるのは、プレゼントを貰った方です。
  • 謝罪をして許すかどうかを決めるのは、謝罪をされた方です。
  • 叱責をして謝罪するかどうかを決めるのは、叱責された方です。

そのほかにも事例はいくらでも出せますが、課題の分離の考え方では、

「最終的な結論」を出す側が、その課題を持つ側です。

「最終的な結論」を出さない側は、極論としてその課題とは関係がないので、いちいち考えても仕方がないということです。

注意点としては、これは極論としてです。

この「課題の分離」の理論の危ういところは、それはあくまでも極論であって、それを人間関係全般に文字通り適用させてしまうのはどうなの?という事です。

ただ、その考え方は、人間関係を築いていくにあたって、初期のそして根底のスタンスとして持つことはとても効果的です。

先ほど、人間関係を築く上においては、徐々に距離を近づけていくのが良いと言いましたが、

この課題の分離の考え方を前提にしたうえで、どんどん親しくなっていくようにすれば、

過干渉や過依存といった不健全な関係を防ぐことができます。

ちょうどよい距離感の取り方

さて、それでは次に具体的にこの「課題の分離」という考え方をどのように活用するのか、という事について話します。

その方法はシンプルで、3つのステップです。それは、

  1. 課題を分離して考える
  2. 相手を思いやり尊重する
  3. その上で相手に関わり、相手にも関わらせることを許す

STEP1 課題を分離して考える

まず最初にするのは、自分と他者の課題を分離して考える姿勢を持つということです。

いちいち、「これは自分の課題で、これは相手の課題」と考えていると大変と思うので、イメージとして自分と相手との間に架空の長い距離があることをイメージしてみると良いでしょう。

例えば、今抱えている悩みなど1つ考えてみましょう。

では例えばの事例として、

「昔は仲が良かったけど生活スタイルの変化で疎遠になりがちな友達」との関係を例にしてみましょう。

Aさんは、少し疎遠になってしまった旧友の事で悩んでいます。

昔は定期的に会っていたのに、お互い仕事も別々、プライベートも別々で、あまり会えません。

Aさんはこんなことを考えています。

「久しぶりに誘おうかな。でも迷惑かもしれない。自分も正直、プライベートも忙しいし、会う時間を作るのは考えもの。でも友人関係は大切にしたいから、そろそろ会いたいな。でも、相手はどう思うかな。向こうから連絡してこないということは、もう自分のことは前みたいには思っていないのかな?」

まず課題を分離してみましょう。

Aさんの課題は、

・誘うかどうかを決めること
・会う時間を作るかどうか決めること
・旧友のことをどう思うか

一方で友達の課題は、

・誘われた時行くかどうか決めること
・Aさんとの関係を大切にするかどうか
・Aさんのことをどう思うか

「課題の分離」の考え方に基づくと、この時Aさんは、

自分の課題のことについてだけ考えれば良いです。友達の課題については、考えるのは自由ですが、それについてヤキモキしたり、勝手に判断をして決めつけたりはしていけません。

STEP2 相手を思いやり尊重する

さて、STEP1で課題を分離できました。それでは次にどうするかというと、「相手を思いやり尊重する」ということ。

何を尊重するのかというと、相手の課題については、相手が結論を出すということについてです。

例えば、Aさんはこのstep2を通じて

「自分は友達のことを大切にしたい。そして、今誘うかどうかを決めるのは自分。全然誘っていないことについて、相手がどう思うかは相手が決めることなのだから、これ以上考えても仕方ないな。相手にどう思われるかを心配して、誘うのはやめよう。自分が誘いたいかどうかが大事。確かに、最近はプライベートでも忙しいし、他にやることもたくさんある。うーん。でもやっぱり友達との関係は大切だから誘うことにしよう。」

Aさんは、しっかり課題の分離ができた上で「友達を誘う」という結論を出せています。

同じ結論を出すにしても、「相手に嫌われると嫌だから」「相手に大切に思っていないと思われたくないから」といった理由で結論を出すのとは違い、

Aさんは、自分が会いたいから誘うことにしました。

そして、誘った結果として、Bさんが断ったとしても、Aさんは課題の分離ができているので、断られたことについて思い悩んだりすることもないでしょう。

STEP3 その上で相手に関わり、相手にも関わらせることを許す

豊かな人間関係を築いていくためには、時には相手の領域に自分が入り、そして自分の領域にも相手を入れることを許可することは大切です。

しかし、課題の分離ができていない状態で、相手に関わり、そして相手にも関わらせてしまうと、先ほどいったように「過干渉」「過依存」へと発展しかねません。

課題の分離をした上で、相手に関わり、相手にも関わらせることが健全な人間関係を築いていくためには大切なのです。

このステップ3がうまくできている事例としては、例えば「聞き上手」と言われる人はこれができている人です。

「聞き上手」の人は、あれこれ指摘して相手を操作しようとするのではなく、相手の話にじっくり耳を傾け、時折ためになるアドバイスを含めます。

アドバイスというのは、命令ではありません。アドバイスというのは、最終的な判断は相手に任せつつも、自分の考えを添えてあげるという行為です。

友人関係や会社の関係では、このようなステップ3の関係が築けている人でも、

いざ子供との関係や親との関係になると、課題の分離の考えが曖昧になって、気づいた時には「過干渉」「過依存」になっているパターンも多くあるでしょう。

そのため、今日紹介した流れについて意識的になることは大切です。

まとめ

以上の3ステップは、まさに「相手との距離感を徐々に詰めていく」という一連の流れを示しています。

普段は、今日紹介したステップを無意識的にできている方も多いと思います。

ただ、人間関係の悩みと言えるレベルに発展している関係性について見てみると、悩みに発展する過程で、その3つのステップがうまく機能せず、

どちらかがどちらかに過干渉・過依存になっている可能性が高いです。

今日は、「課題の分離」という概念について紹介しました。

この「課題の分離」という概念は、人間関係を築いていくにあたっての土台の考え方として持つことがおすすめです。

一つ誤解が生まれないように。それは、人間関係をドライに捉えるということではありません。

むしろ逆で、先ほど書いたように、

「相手を思いやり、相手を尊重する」ことを可能にする基本スタンス

そして、そのことは同時に、

「自分を思いやり、自分を尊重する」ことを可能にする基本スタンス

でもあります。

さて、今日までの内容で、

①人間関係の問題は距離感の問題(他者理解を深め、自己理解を深める)

②他者理解の観察眼を持つ(3つの他者分析の心理的手法を紹介)

③他者と自分との溝になりうる「認知の歪み」を知る(10パターンを紹介)

④他者と自分との適切な距離感の取り方(課題の分離を基本スタイルに)

まで紹介してきました。ここまで「悩み」にフォーカスされてきていますので、

他者に対して良い影響力を与えたり、他者との関係を通じて自分を良い方向に変えていくための考え方なども、積み重ねていくように解説していきますね。

それでは次回もお楽しみに!